2000年以降生まれの人は、このソフトで自分の運勢を一切占えません。
1988年11月29日、ゲームメーカーのジャレコから一本の異色ソフトが発売されました。その名は「中国占星術」——ファミリーコンピュータ上で、ゲームではなく純粋な占いを楽しむための、いわば「実用ソフト」です。開発はトーセが担当し、当時の定価は5,900円でした。ゲームソフトが数千円台で販売されていた時代において、中身がゲームではなく占いツールというのは、かなり思い切った挑戦だったといえます。
このソフトが特筆すべき理由のひとつは、ファミコン史上初の「ゲーム要素を持たない実用ソフト」であるという点です。ファミコンといえばアクションやRPGといったゲームを遊ぶ機械というイメージが強いですが、この作品はその概念を覆しました。つまり占い専用ツールです。
発売当時の1988年末は、占いソフトが一気に登場した激動の時期でもありました。同じ12月には「'89電脳九星占い」(イントロダクションプロデュース・定価9,800円という驚愕の高額設定)と「タロット占い」(スコーピオンソフト)がほぼ立て続けに発売されており、1ヶ月以内に3本の占いソフトが競合するという異例の状況が生まれていました。これは意外ですね。
結果として、「中国占星術」はその3本の中で内容と価格のバランスがもっとも優れていると後の評価者たちに認められています。競合の「'89電脳九星占い」は9,800円という高値にもかかわらず1989年分しか占えないという致命的な欠陥があり、「タロット占い」はディスクシステム版でロードが頻繁に挟まるためテンポが悪かったとされています。比較すれば、中国占星術の完成度の高さが浮かび上がります。
占いの根拠となっているのは、中国4,000年の歴史を持つ東洋の占星術です。太陽や月などの天体の動きをもとに「運命星(主星)」を導き出し、その人の運命や性格を読み解くという仕組みを採用しています。この考え方は、のちに「紫微斗数(しびとすう)」と呼ばれる中国式占星術の流れと一部共通しており、単なるゲーム的な演出ではなく、伝統的な占い理論に根ざした内容になっています。占いが好きな方にとっては見逃せないポイントです。
ゲームカタログ@Wiki「中国占星術」詳細レビュー——機能・評価・余談まで詳しくまとめられた公式レビューページ
「中国占星術」の最大の特徴は、1本のカセットに8種類もの占いメニューが収録されている点です。占いは単に「今日の運勢」を眺めるだけにとどまらず、かなり多彩な切り口から人生を分析できる構成になっています。
まずデータ入力について説明しましょう。このソフトでは、男性5人・女性5人の合計最大10人分の名前と生年月日を登録できます。ただし登録できる生年月日は1900年1月1日〜1999年12月31日までに限定されているため、2000年以降生まれの人は本人のデータを登録することができません。これが記事冒頭の驚きの一文につながっています。
収録された8つの占いメニューは以下のとおりです。
| 占いの種類 | 内容の特徴 |
|---|---|
| 相性占い | 登録した異性1人との相性を「大ハート/小ハート/割れハート」の3段階+詳細メッセージで判定 |
| 結婚占い | 異性1人との結婚後の行く末を占う。相性占いと似て非なる視点から分析 |
| 金運占い | スロットマシンの演出で年・月・日単位の金銭運を告知 |
| 仕事占い | 性格に合った職種とその理由を解説 |
| 日運占い | 今日の運勢・日運グラフ・心理テスト・行動テスト・今日の相性の5項目 |
| 月運占い | 指定した月のラッキーデー・ラッキーカラー・ラッキーフードなどを提示 |
| 年運占い | 指定年のバイオリズムグラフ+天中殺の時期まで表示 |
| 性格占い | 主星に基づいた性格・将来的な外見まで詳細に語る |
特に日運占いの中にある「行動テスト」は面白い仕掛けがあります。日付を指定してその日の予定(デート・愛の告白・宝くじ・旅行・スポーツなど8通りから選択)を入力すると、100点満点の点数方式で運勢を判定してくれるのです。これはゲーム機らしいインタラクティブな演出で、ただ結果を読むだけではない「参加感」が味わえます。これは使えそうです。
また日運占いに関しては、対象日を2099年12月31日まで指定することができます。1988年発売のソフトでありながら、当時から111年先まで占えるように設計されていたということですね。1999年12月31日生まれの人が100歳を超えた時の日運まで占えるという、驚くべき長期対応設計です。
占いの演出にも工夫が凝らされており、相性占いでは浜辺を2人が歩くアニメーションが流れ、金運占いではスロットマシンが回転します。ファミコンのハード性能の限界の中で、視覚的なエンターテインメントとしても楽しめるよう工夫された設計は、当時としては評価に値するものでした。ただし、セーブ機能がない点はひとつの注意事項です。電源を切るたびにデータが消えてしまうため、毎回名前と生年月日を入力し直す必要があります。
このソフトの中でも特に盛り上がるのが、相性占いと結婚占いの機能です。占い好きの方なら誰でも一度は考えたことがあるはず——「あの人と自分は相性がいいのだろうか?」という問いへの答えを、中国4,000年の占星術をもとに導き出してくれます。
使い方はシンプルです。事前に男女合わせて10人分(男性5人・女性5人)の名前と生年月日を登録しておき、占いたい本人と相手を選択するだけです。相性の結果は「大ハート(最良)」「小ハート(良好)」「割れハート(要注意)」の3段階で視覚的に表示された後、詳細なメッセージが語られます。
このソフトの興味深い点として、入力する情報は「名前」と「生年月日」だけで足りるという気軽さがあります。つまり、相手が実在の人物でなくとも、アニメや漫画のキャラクター、好きなアイドルや芸能人の公開されている生年月日があれば、誰とでも相性を占えるということです。名前と生年月日さえわかれば問題ありません。
これがこのソフトの独自の楽しみ方として定着しており、複数の実況動画でも「好きなアイドルの生年月日を入力して相性チェック」というプレイが行われています。例えばYouTube上に2017年投稿の実況動画では、「芸能人9人といっしょに占ってみた」という内容で多くの視聴者を集めました。普通の占い師に「アイドルとの相性を占ってほしい」と頼んでも難しいことを、このソフトは軽々とこなしてしまうわけです。
また、相性占いとは別に「結婚占い」も独立したメニューとして存在します。こちらは相性の良し悪しを判定するのではなく、「この相手と結婚した場合にどんな未来が待っているか」をシミュレーションするもの。同じ相手を占っても、相性占いと結婚占いで異なる切り口の結果が出てくることがあるため、二度おいしい構成です。
占いの根拠となるのは「十大主星」という概念で、生まれた年月日から人物の「主星」を算出し、その星に対応した運命や性格・相性を読み解きます。これは中国の伝統的な占星術の考え方に由来するもので、西洋占星術の「太陽星座」に相当する核心的な要素といえます。つまり、占いとしての理論的な土台がきちんと存在しているということです。
発売から37年以上が経過した現在も、このソフトはレトロゲーム市場で流通しています。2026年現在のメルカリでの相場は、ソフト単体(箱・説明書なし)であれば600円〜800円程度、箱・説明書付きの美品であれば2,000円〜2,500円前後で取引されています。駿河屋での買取価格も確認できます。
定価5,900円だったソフトが37年後に680円〜2,500円で流通しているという事実は、単純に価格が落ちたというより、「現役で使えるレトロ占いグッズ」として一定の評価を保ち続けていることを示しています。実用品としての需要が今も生きているということですね。
一方、このソフトには致命的な制限が存在します。登録できる生年月日の上限が1999年12月31日であるため、2000年以降(いわゆる「ミレニアム世代」以降)に生まれた人は、自分のデータを入力して運勢を占うことができません。2000年生まれの人は現在26歳ですが、そういった若い占い好きの方がこのソフトを手に入れても、自分自身の占いには使えないという制約があります。
ただし、それはあくまで「自分を登録する」場合の話です。1999年以前に生まれた家族や友人のデータを登録して相性占いなどを楽しむ使い方であれば、何ら問題ありません。また、おそらく多くの占い好きのコレクターにとっては「所有すること自体の価値」「レトロ占いツールとして飾ること」も立派な理由のひとつです。
このソフトの開発元がトーセという会社であることも、知る人ぞ知る豆知識です。トーセは「下請け専門」のゲーム開発会社として有名で、数多くの人気タイトルの開発を陰で支えてきた縁の下の力持ちです。同社が手がけたというだけで、技術的な水準の確かさが伺えます。
レトロゲームとしての観点では、このソフトは「クソゲーか名作か」という議論の外側に存在する特殊なポジションを持っています。ゲームとして評価するのではなく、「1988年に本格占いをファミコンで実現した先駆的な実用ソフト」として捉えるべき作品です。当時の占いブームを反映した歴史的証言として、コレクターや占い研究家にとって価値ある一品といえます。
駿河屋「中国占星術ファミコン」買取・販売ページ——現在の市場価格や状態確認に役立つ公式ページ
「中国占星術」が発売された1988年末は、日本の占いカルチャーにとって特別な転換点でした。テレビや雑誌で星座占いが盛んに取り上げられ、社会全体で占いへの関心が高まっていた時代です。そのタイミングで「ファミコンでも占いができる」という画期的なコンセプトが登場したことは、ゲームと実用ツールの境界線を問い直す挑戦でもありました。
当時のファミコンソフトの多くはひらがなとカタカナさえ満足に使いこなせない制限の中で作られていましたが、中国占星術は漢字を含む豊富な文字表現を実現していました。これはファミコンのハード性能を考えると技術的にも挑戦的な実装であり、占いコンテンツとして「読み物として成立する」ための重要な条件を満たしていたといえます。
この流れは現代に至るまで続いており、スマートフォンアプリや占いWebサービスとして引き継がれています。生年月日と名前を入力するだけで多様な占い結果が出るという基本的な設計は、1988年のファミコン版から本質的に変わっていません。中国占星術ファミコン版は、デジタル占いの原点のひとつといっても過言ではないでしょう。
同時代に発売された競合ソフトと比較してみると、その完成度の高さが一層際立ちます。「'89電脳九星占い」は定価9,800円(ファミコンソフトの中でも屈指の高額)でありながら1989年分しか占えないという欠陥があり、「タロット占い」はロードの多さでテンポを損なっていました。中国占星術は定価5,900円で8種類の占いを長期間にわたって楽しめる設計であり、価格・内容・操作性のバランスで明確に一歩リードしていました。
現在の占い好きの方が中国占星術ファミコン版を楽しむには、実機(ファミコン本体)を用意するか、互換機を活用する方法があります。レトロゲームの互換機はAmazonや家電量販店でも購入でき、現代のテレビにHDMI接続できるタイプのものが1台5,000円〜10,000円程度で流通しています。ソフト自体が680円〜2,500円で入手できる現在、「少しレトロな占いを試してみたい」という方には十分現実的な選択肢です。
占い好きの方にとってこのソフトの最大の魅力は、中国4,000年の歴史に基づく本格的な占いを、手軽にインタラクティブな形で体験できることにあります。スマホアプリの占いに慣れた現代でも、ファミコンのレトロな画面で語られる運勢は独特のノスタルジアと説得力を持っています。結論は「占いの楽しさはいつの時代も変わらない」ということです。
原宿占い学院「紫微斗数」無料占いページ——ファミコン版と共通する中国式占星術の現代版を体験できる参考サイト

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